システム開発のご相談をいただく中で、「これ、WordPressでできますか?」という質問をいただくことがよくあります。
確かにWordPressをはじめ、GoogleフォームやShopifyなどの既成システムは、非常に便利で優れています。
短期間で導入できてコストを抑えられるため、実際に多くの企業で活用されています。
一方で、「業務に合わせた管理画面を作りたい」「複数のシステムと連携したい」「独自の業務フローをそのままシステム化したい」といった場合は、既成システムだけでは対応が難しいケースがあります。
そのため、システムを検討する際に大切なのは、「既成システム(パッケージやSaaS)と自社システム(オーダーメイド)のどちらが優れているか」を比較することではありません。自社の目的や業務に合った方法を選ぶことが重要です。
では、自社の課題を解決するには「既成のシステム」と「ゼロから構築する自社システム(スクラッチ開発)」のどちらを選ぶべきなのでしょうか?
本記事では、それぞれの特徴やメリット・デメリットを整理した上で、選択に迷ったときの「3つの判断基準」を分かりやすく解説します。
さらに、昨今の主流となっている「双方の良いとこ取り」をするトレンドについてもご紹介します。
自社に最適なシステム投資を見極めるための参考に、ぜひ最後までご覧ください。
既成システム(パッケージやSaaS)とは?
既成システムとは、すでに完成しているサービス(SaaS)やソフトウェア(パッケージ)を利用することです。
利用者は一からシステムを開発する必要がなく、アカウントを作成したり、初期設定を行ったりするだけで利用を開始できます。
代表的な既成システムには、以下のようなものがあります。
- WordPress:コーポレートサイトやブログの構築
- Shopify:ネットショップ(ECサイト)の構築
- Googleフォーム:お問い合わせフォームやアンケートの作成
- kintone:業務管理・顧客管理
- EC-CUBE:ECサイト構築
これらは多くの企業で利用されており、目的に合えば短期間で導入できる便利なサービスです。
既成システムのメリット
導入までが早い
すでに完成したサービスを利用するため、開発期間が不要です。設定やデザインの調整だけで運用を始められるケースも多く、短期間で導入できます。
初期費用を抑えやすい
ゼロからシステムを開発する場合と比べて、初期費用を抑えられることが多く、小規模な導入にも適しています。
実績が豊富で安心感がある
多くの企業に利用されているサービスは情報も豊富で、運用方法やトラブル時の解決策を見つけやすいというメリットがあります。
既成システムのデメリット
システムに業務を合わせる必要がある
多くの企業が利用できるよう設計されているため、自社独自の業務フローに合わせることは難しい場合があります。
カスタマイズに限界がある
機能を追加できるサービスもありますが、「この画面をこう変えたい」「独自の承認フローを作りたい」といった細かな要望には対応できないことがあります。
長期的にはコストが高くなる場合もある
月額利用料やオプション料金、利用人数による課金などが積み重なり、長期間利用するとトータルコストが想定以上になるケースもあります。
既成システムを選ぶ際に注意したいのは、無理にカスタマイズし続けるケースです。
プラグインを追加し、カスタマイズを重ねた結果、システム全体を把握できる人がいなくなり、アップデートのたびに不具合を心配しなければならない状態になることもあります。
そこまでくると、導入の早さ・コストの安さ・運用ノウハウの豊富さといった、既成システム本来のメリットは失われてしまいます。
自社システム(オーダーメイド)とは?
自社システム(オーダーメイドシステム)とは、自社の業務やサービスに合わせて設計・開発するシステムのことです。
既成システムのように用意された機能を利用するのではなく、「どのような業務を効率化したいか」「どのようなサービスを提供したいか」に合わせて設計・開発します。そのため、必要な機能だけを実装でき、無駄のないシステムを構築できるのが特徴です。
例えば、次のようなシステムが挙げられます。
- 会員制サービス
- 予約システム
- 業務管理システム
- マッチングサービス
- 社内ポータル
- 申込・受付システム
- 電子申請システム
自社システムのメリット
業務に合わせて最適化できる
自社の業務フローに合わせて設計できるため、「システムに業務を合わせる」のではなく、「業務にシステムを合わせる」ことができます。現場の運用を大きく変えることなく、効率化を実現できます。
必要な機能だけを実装できる
不要な機能を省き、本当に必要な機能だけを搭載できるため、使いやすく、現場にも定着しやすいシステムになります。
他システムとの連携がしやすい
既存の自社システムや会計ソフト、既成システムなどと連携し、自社に合ったシステム環境を構築できます。
将来的な機能追加や改善に対応しやすい
事業の成長や業務の変化に合わせて、機能を追加したり改善したりしやすいのも大きなメリットです。必要になったタイミングで段階的に機能を増やしていくことができます。
競争力につながる仕組みを実現できる
独自のサービスや業務フローをそのままシステム化できるため、他社との差別化につながる仕組みを構築できます。
自社システムのデメリット
初期費用がかかる
オーダーメイドで設計・開発を行うため、既成システムと比べると初期費用は高くなる傾向があります。
要件を整理する必要がある
「どのような業務をシステム化したいのか」「どのような機能が必要なのか」を整理する必要があります。ただし、開発会社と相談しながら進められるため、最初からすべて決まっている必要はありません。
開発期間が必要
システムの規模にもよりますが、要件定義や設計、実装、テストを行うため、既成システムと比較すると導入までに期間が必要です。
独自の見積ロジックや長年培ってきた業務フロー、蓄積したデータの活用方法など、会社の競争力そのものになっている業務は、オーダーメイドでシステム化する価値があります。
他社と違うからこそ価値のある部分を、既成システムの仕様に合わせてしまうのは、自社の強みを十分に活かせなくなる可能性があるからです。
どちらを選ぶ?3つの判断基準
それぞれのメリットとデメリットを読んで、「既成システムと自社システム、結局どちらを選べばいいの?」と思われた方も多いと思います。
その答えは企業によって異なりますが、判断する際に押さえておきたいポイントは次の3つです。
1.その業務は会社の競争力につながるか
まず考えたいのは、その業務が会社の強みや競争力につながるものかどうかです。
例えば、経理や勤怠管理、名刺管理などは、多くの企業で共通する業務です。このような業務は、既成システムを活用することで十分対応できるケースがほとんどです。
一方で、独自の申込フローや見積ロジック、業界特有の管理方法など、「そのやり方自体が会社の価値」になっている業務は、既成システムに無理に合わせることで、本来の強みを失ってしまう可能性があります。
他社との競争力につながる業務ほど、自社システムを検討する価値があると言えるでしょう。
2.業務をシステムに合わせられるか
既成システムは、多くの企業が利用できるよう設計されています。そのため、導入する際は業務の進め方をシステムに合わせることが前提になります。
もし、「業務フローが変えられない」「業務の変化に応じて追加開発も考えている」「現場の運用をそのままシステム化したい」という場合は、既成システムでは対応しきれず、多くのカスタマイズが必要になることがあります。
結果として、カスタマイズを重ねたことで費用が膨らんだり、希望通りには対応しきれなかったりと、最初からオーダーメイドで開発したほうが良かったというケースもあります。
反対に、「この機会に業務を標準化したい」「一般的な運用に合わせても問題ない」という場合は、既成システムのメリットを最大限に活かせます。
3.5年間のトータルコストで考える
システム選びでは、初期費用だけで判断しないことも重要です。
既成システムは初期費用を抑えられる一方で、月額利用料やユーザー数に応じたライセンス費用、オプション料金などが継続的に発生します。利用人数や機能が増えるほど、長期的なコストは大きくなる傾向があります。
一方、自社システムは初期費用こそ必要ですが、その後は保守費用を中心とした運用になるため、5年程度の長期で比較すると、トータルコストが逆転するケースもあります。
システムを選ぶ際は、「初期費用」ではなく、「5年間でいくらかかるか」という視点で比較することをおすすめします。
ケース別に見る、おすすめの選び方
実際に、当社でも既成システムとオーダーメイドの両方をご提案しています。
例えば、独自の申込受付フローをシステム化したいというご相談では、業務の流れそのものが重要だったため、オーダーメイドでシステムを開発しました。
一方で、自社の取り組みやお知らせを発信したいというご相談では、更新しやすく実績も豊富なWordPressをご提案し、導入を支援(カスタマイズ)しました。
このように、「オーダーメイドだから良い」「既成システムだから良い」ということではありません。目的や業務内容に合わせて最適な方法を選ぶことが、結果としてコストや運用面でも成功につながります。
既成システムと自社システムの併用がトレンド
では、既成システムか、自社システムか、どちらか一方を選ばなければいけないのでしょうか。
実は、両者を組み合わせて活用する企業が増えてきているのです。
例えば、会社の競争力につながる重要な業務はオーダーメイドで開発し、その周辺機能には実績のある既成システムを活用するという考え方です。
具体的には、次のような組み合わせがあります。
- 独自の会員管理システムとLINE公式アカウントを連携する
- 申込受付システムとGoogleフォームなどのアンケートフォームを連携する
- 顧客管理システムとメール配信サービスを連携する
- 業務システムのデータをLooker Studioと連携し、ダッシュボードで可視化する
このように、「会社の強みになる部分」はオーダーメイドで構築し、「多くの企業で共通して使う機能」は既成システムを活用することで、それぞれのメリットを活かしたシステムを実現できます。
近年は、多くのクラウドサービスがAPI連携に対応しており、システム同士を組み合わせることも以前より容易になっています。そのため、すべてをオーダーメイドで開発する必要はありません。
大切なのは、「どこを自社システムで作るべきか」「どこは既成システムに任せるべきか」を見極めることです。
この切り分けが適切にできれば、開発コストを抑えながら、自社の業務に合った使いやすいシステムを構築できます。
システム選びで重要なのは、「既成システムか、自社システムか」という二者択一ではなく、それぞれの長所を活かして最適な組み合わせを考えることなのです。
まとめ
既成システムと自社システムは、どちらが優れているというものではありません。大切なのは、自社の業務や目的に合った選択をすることです。
また、現在では「既成システムか、自社システムか」の二者択一ではなく、それぞれの長所を活かして併用するのが主流になっています。重要な業務はオーダーメイドで構築し、それ以外は既成システムを活用することで、コストと使いやすさのバランスを取りやすくなります。
業務をシステムに合わせるべきか、それともシステムを業務に合わせるべきか。答えは業務ごとに異なります。そして、その判断は社内だけでは意外と難しいものです。
株式会社パパグラムでは、オーダーメイドのシステム開発だけでなく、「既成システムで十分なのか」「オーダーメイドにしたほうがよいのか」「どこまで既成システムを活用し、どこを開発すべきか」といったご相談も承っています。
ご相談いただいた結果、「今回は既成システムの導入だけで十分ですね」とお伝えすることもあります。お客様にとって本当に適した方法をご提案いたしますので、システム選びに迷われた際は、お気軽にお問い合わせください。